不動産投資における節税効果として損益通算による所得税の還付のことを良く聞きますが、住民税のことはあまり耳にすることがありません。それは、住民税の課税の方法が所得税とは異なることに起因します。しかし、住民税にも節税効果は表れます。
住民税の課税方法
住民税の課税方法は所得税とは異なります。所得税は給与所得者であれば源泉徴収され、年末調整にて精算が行われ課税額が確定します。それ以外では確定申告で課税所得を確定します。このため源泉徴収を行う給与所得者が後日確定申告を行って、損益通算によって他の赤字を給与所得で補った場合にはすでに支払っている所得税が還付されることになるのです。
住民税は、確定した所得に基づき1年遅れで課税がなされます。したがって確定した所得に対して課税を行うので、特殊な場合を除き基本的に還付が行われることはありません。住民税には確定した所得に一律10%を乗ずる所得割と定額の均等割があります。所得割10%の内訳は区市町村民税6%と都道府県民税4%となります。均等割は東京都を例にとると都民税額1,500円と区市町村民税額3,500円の合計額です。均等割は地域によって若干の差があります。この所得割と均等割の合計額から、配当控除などの税額控除を行った金額が住民税です。
住民税の節税効果
住民税は確定した金額に対してこのように課税をするために、基本的に還付する必要がありません。住民税の節税効果が表れるのは所得割に対してとなりますが、不動産投資によって赤字が発生し、損益通算を行った結果、給与所得などが減額する場合には、住民税は課税の時点で節税効果が表れていることになります。
つまり不動産所得で100万円の赤字が計上された場合に、損益通算によって給与所得が600万円から100万円低くなって500万円になった場合には、当該年に対応する住民税が課税される時点で100万円の10%である10万円が節税されていることになります。このために所得税の節税については還付という形で分かり易いのですが、住民税はすでに課税時に節税されているために、節税の効果が分かりにくいのです。しかし、確実に節税されています。
節税の効果が表れないケース
住民税は課税所得が125万円以下となると、所得割が課税されずに均等割税額のみが課税されます。年収500万円でも扶養控除が3人で他の様々な控除をフルで適用した場合には課税所得が125万円以下となるため、この場合には住民税の節税効果が受けられません。
このように状況によっては不動産投資による節税効果が受けられないことがあるので、投資判断の材料のひとつになれば幸いです。