2018年に厚生労働省のモデル就業規則の「副業・兼業」部分が改定され、正社員が副業をしてもよいという条項が作られたことにより、これまで大手企業の一部のみが認めていた副業をOKにする中小企業も増えるなど、最近では、働き方も様々な方法が増えてきたようです。
参考; 厚生労働省HP 副業・兼業|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
感染症などの蔓延により、在宅勤務に切り替わり、残業が減ったなどの声を耳にすることもありますが、そんな時に副業は収入を増やすための1つの手段として有効だと思います。
しかし、正社員が副業するときには、会社での年末調整だけではなくご自身で確定申告する必要があるということを皆さんはご存知でしょうか?
2箇所以上から給与を得ている人は、規定以上の収入の場合は、自分の年間合計所得を確定申告により税務署に報告する義務があるからです 。
さてそんな中、2022年の8月1日に国税庁が「年収300万円以下の副業収入は、基本的に雑所得として分類する」と所得税の基本通達の改正案を公表しました (※)。
今回はこの改正案がどのような影響を及ぼすのか所得税の基本原理と共に紹介していきたいと思います。
(※この改正案は、2022年10月7日に大幅修正され、「帳簿の有無」を基準に雑所得と事業所得を判断する方向になりました。2022年10月19日筆者追記)
□10種類の所得の話□
まずは、所得税について簡単に紹介します。
日本の所得税法では、性質や所得の発生の違いによって所得を10種類に区分しています。
図1; 10種類の所得のうち損益通算可能な所得とは (筆者が作成) 参考;国税庁HP 所得の種類と課税方法|国税庁 (nta.go.jp)
■10種類の所得■
〇給与所得・・・会社員や公務員の給与など
〇一時所得・・・生命保険の一時金などの
〇退職所得・・・退職金や確定拠出年金の一時払いの老齢給付金など
〇利子所得・・・公社債や預貯金の利子など
〇配当所得・・・株や投資信託などの配当
〇雑所得・・・・国民・厚生年金などの公的年金や副業に係る所得など
〇不動産所得・・土地や建物などの貸付からの所得
〇譲渡所得・・・土地や建物・株式などを譲渡して得られた所得
〇山林所得・・・所有期間5年以上の山林を伐採して得られた譲渡所得
〇事業所得・・・自営業の所得など
今回の国税庁の所得税の基本通達は、「年収300万円以下の副業収入は、基本的に雑所得として分類する」というものです。
ですので、今までの年収300万円以下の副業を、『事業所得』として確定申告をしていた人は、令和4年度の確定申告から『雑所得』へ変更することになります。
(※この改正案は、2022年10月7日に大幅修正され、「帳簿の有無」を基準に雑所得と事業所得を判断する方向になりましたので、ご確認ください。。2022年10月19日筆者追記)
世間一般ではこの改正は「実質増税」などと言われていますが、それはなぜでしょうか。
その理由は、所得税法第69条の『損益通算制度』と『青色申告制度』にあります。
□損益通算制度を活かすと□
上記の表にあるように、「事業所得」「不動産所得」「山林所得」「譲渡所得」の4種類の所得は、「損益通算制度」として、収入よりも経費が上回り、赤字所得になった場合には他の所得の黒字と相殺することができます。
参考 ;国税庁HP No.2250 損益通算|国税庁 (nta.go.jp)
仮に、副業が100万円の赤字になった場合、本業であるサラリーマンの給与年収800万円とすると、
★事業所得で申告 → 所得金額700万円 (800万円 + 副業収入▲100万円)
★雑所得で申告 → 所得金額780万円 (800万円 + 副業収入0円 -雑所得控除20万円)
となり、累進課税制度を適用している日本の所得税制度では、雑所得で申告した方が多くの税金を納めることになります。
さらに、事業所得では『青色申告制度』がありますので、一定の条件を満たせば最大65万円の控除も適用できますので、税金面でいうと、事業所得で申告できなくなると、実質増税になってしまことになります。
(参考; 国税庁HP No.2072 青色申告特別控除|国税庁 (nta.go.jp)
□マンション経営への影響は?□
今回の改正案は『雑所得』と『事業所得』の明確な線引きを決めるものでした。
マンション経営に取り組むと、『不動産所得』として確定申告をすることになりますので、今回の改正には大きな影響はありません。
引き続き、所得税法第69条「損益通算制度」を利用することができますので、この制度を利用することで、所得税・住民税の還付も受けることができる場合があります!
ご自身の所得と税金について興味が沸いた方は、ぜひこの際マンション経営について知ってみてください♪ (お問い合わせはこちらから→お問合せ | SRコーポレーション (sr-corp.jp)
いかがでしたでしょうか?
今回は令和4年度から適用される副業収入の確定申告制度についてお話しました。
年度末も近づいてきましたので、ご自身の1年間を振り返ってみるのもいいかもしれないですね。
SRコーポレーションではお客様一人ひとりに合わせたライフプランの設計をしておりますので、年金・保険・税金など気になることがあればぜひご相談くださいませ。
それではまた✋
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